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厚別競技場を薄い雲が覆った。その雲を払うかのように強い風がフィールドを吹き抜ける。朝露に濡れる芝、静まり返る競技場に突如、男達の雄叫びが響いた。「All For Victory」をスローガンに掲げ、去年の冬から走り出した『MAD WOLVES ‘04』。選手達の様々な想いは声となり汗となり,チームの士気を上げていく。荒ぶる気持ちを抑えながら、フィールドに横1列に並んだ選手達。厚別競技場は再度、静寂に包まれた。

朝から吹いていた風はフィールドの上の雲を払いのけ、セレモニーを待っていたかのように太陽が顔を覗かせた。徐々に鮮やかな緑色を取り戻すフィールド。その中央には主将 #6安藤、を始めとして#7小野田、#16舘合、#39古家が顔を並べた。

セレモニーが終わり、4人が振り返ると、待ちきれなかったかのようにフィールドに飛び出し、ハドルを組む選手達。自分達の意志を再確認するように雄叫びをあげる選手。主将 安藤の合図で、晴れ渡る空に向かい、人差し指を高々と突き上げた。MAD WOLVES‘04、初戦の火蓋が切って落とされた。


道工大のキックで試合開始。キッカーは新人の澤田。初めての試合の雰囲気にのまれたのかミスキック、距離の出なかったキックを上級生が援護する。ハードヒットで次々とリターンチームをなぎ倒していくカバーチーム陣。

「春はテクニック以前にヒットを中心にメニューを組んだ。」と口を揃えるコーチ陣。その成果はキックカバーで早くも実を結ぶ。

北星オフェンスをあっさり退かせ、迎えた道工オフェンスの1stシリーズ。チャンスは突然訪れる。

フィールド中央での攻撃で、RB #6安藤が左OPENサイドを駆け上がり北星エンドゾーンに迫る。しかし、エンドゾーン目前でタックルを受けた安藤。次の瞬間、安藤の腕からボールがこぼれ落ちてしまったのである。エンドゾーンを転がったボールは無情にもエンドラインを割ってしまいタッチバックに。道工、先制のチャンスをフイにしてしまう。

オフェンスのランプレイの好調に、ディフェンスも好守で応える。常に良いフィールドポジションで試合を進める道工大、再三得点のチャンスを迎えるが肝心のところでの反則、ミス等でタッチダウンを奪えない。対して、時間を使いながらゆっくり前進し続ける北星オフェンスに嫌な空気が立ち込める道工大。

この嫌なムードを払拭したのはDLの3年生コンビ、#69蝦名と#71尾越だった。インサイドからの強烈な縦のプレッシャーで北星OL陣に仕事をさせず、北星も又、あと1歩のところでのゲインが出来ない、ゲームは膠着状態へ。


落ち着き始めたゲーム展開に小さな波が立ち始めた。北星のショートパスが決まり始める。それにつられるかのようにミスが目立ち始める道工。勢いに乗り始める北星、道工ディフェンス陣に焦りが見え始める。北星のパスが道工陣営に深く投げ込まれた。捕ったのはCB #84高野名。見事なインターセプトで息を吹き返した道工、いや、息を吹き返すはずだった。北星の勢いは死んでいなかった。次のシリーズ、#25畠山へのパスを試みる。畠山が捕りきれずに弾いてしまったボールは相手CBの手の中へ。まさかのインターセプトで道工はまたしてもフィールドポジションの悪い状態でディフェンスを迎えてしまう。

こうなれば試合は北星ムード、勢いにのった北星は手がつけられない。

北星のランプレイが少しずつ出始めたところに相手TEへのパスが決まりボールは道工ゴール前に簡単に運ばれてしまう。そのままの勢いで北星のFBがエンドゾーンに飛び込んだ。均衡が崩れた。先制は北星、キックも決まり0−7。

たっぷり北星に時間を使われた2Q、反撃の時間は残されていなかった。流れを掴めないまま道工はハーフタイムを迎えてしまう。


もどかしい試合展開にフラストレーションも溜まりつつある応援席。しかし父母、OBは信じていた。この後の道工の快進撃を期待していた。

後半戦が始まった。相変わらず波に乗り切れないオフェンスをディフェンスが辛抱するという前半戦と同じ雰囲気に焦るオフェンス。「何とかしたかったです。」試合後、そう語ったのは#25畠山。自分のキャッチミスから相手に先制を許したことは忘れていなかった。畠山へ再度、パスが投げられる。畠山、執念のキャッチでボールは一気に敵陣30yd付近まで進められる。しかし、こういうチャンスの場面を潰してしまうのが今日の道工。#12伊藤が何でもないQBからのピッチをファンブル。リカバーしたのは北星。またしても上昇ムードに水を注してしまう。

ゆっくり時間をつかう北星、道工ディフェンスにイライラ感が募る。

これ以上の失点を許さないように奮闘しているのはディフェンスだけではない、先ほどから素晴らしいパントでフィールドポジションの回復に貢献していたWR #9垂水が今度はパントリターンで静かに闘志を燃やす。ボールをキャッチした垂水は左OPENサイドを駆け上がりビックリターン。北星ゴール前までボールを進める。勢いに乗りたい道工、4Q開始直後にQB #7小野田のスニークでようやくタッチダウン。しかしこの後のTFP、センターを務める#46安保がスナップミス。キッカー垂水はまともに蹴らせてもらえず外してしまう。6−7、道工、追い上げムードにまたしても水を注す結果となってしまう。


前半の終わりごろから、両面を張るライン陣には疲れが見え始めていた。層の薄いライン陣を新人の三谷、井上が必死にカバーした。新人の頑張りに感化されるかのように徐々に調子を上げる道工オフェンス。逆転を信じて前進する道工オフェンス。#6安藤へ投げられたパスだった。ボールは相手LBの胸の中へ。道工、ここへ来ての痛恨のインターセプトを喫してしまう。ここで事実上のジ・エンド。引き離しにかかる北星は約35ydのフィールドゴールをトライ。#6安藤の決死のダイブでボールは指をかすめ、ギリギリのところで相手に得点を許さないという執念は見せるが、疲労も溜まり、緊張の糸も切れた道工オフェンスは思うようにボールを進められない。つられるようにディフェンスも踏ん張りが効かなくなり、肝心のところが止められない。結局ズルズルと相手に時間を使われた道工。残り時間10秒、北星サイドラインからカウントダウンが聞こえてきた。屈辱のタイムアップ。


道工6−7北星  道工、初戦は苦いスタートとなってしまった。


喜びに沸く北星、沈む道工。両極端の表情を見せるチームをよそに、コーチ陣は静かに口を開く。

「技術以前の問題。1ydでも出す、1ydでも止める。という気持ちが見れなかった。試合前から結果は決まっていたのかもしれない。」と鈴木HC(ヘッドコーチ)。

「ラインは小粒揃いの状況でよくやってくれたと思う。新人三谷、井上はホントに頑張ってくれていたよ。今回、コーチとしての初めての試合、ディフェンスのコールを出したけども・・・まだまだですね。勉強不足です。」と話すのは去年引退してコーチ入り、初めてのコーチとしての試合を経験したLC(ラインコーチ)の相馬。

「春から取り組んできた事を試せた良い機会でした。確かに春の成果が現れた部分はありましたがミスがあまりにも多すぎました。これが現在の僕達の実力結果を重く受け止め、これからやり直していかなければならないです。」と、悔しそうに重たい口を開いたのは主将の#6安藤。

サイドラインから離れ、観客席から静かに試合を静かに見届けた監督高幡は、

「今回は特にスキルポジションのブロック力に力を感じた。キッカーをはじめ、ラインでも1年生が試合経験を積めたことは大きな成果。次戦ではさらに多くの1年生が活躍できるよう期待しています。ただチームとしてはまだまだ優勝云々を語れるレベルには程遠い。上級生の意識が物足りない。もっとフットボールを考える必要がある。」

と、不甲斐無い試合結果に怒りを見せる事無く、ただ冷静に、そして厳しくチームを斬った。


試合後、結果に肩を落とし、今後のチームを深刻に考える主将の#6安藤が、スズランボウル、立教大vs北海学園大の試合に盛り上がる観客席の隅にいた。今回の試合がどれだけ深刻な事態だったのかということをほかの選手は理解しているのだろうか。変えなければならない、変わらなければならない。戦うのは選手たちなのだ。次戦の札大戦はもう、目の前である。 (高橋優和)
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観戦に来て頂いた父兄の方々
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