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まだ、薄暗い明朝。雨の降る音で目が覚めた。

試合当日、外は昨夜から降り出した雨が、まだ、降り続いていた。

さまざまな思い、不安を胸に、選手たちが部室前に集合したのは午前5時半。コンビニで買ってきた朝食を摂る者、ベンチに座り、イヤホンから流れてくる音楽を聴いている者、落ち着かないのかただ、辺りをぐるぐると歩いている者…。様々である。

バスに揺られること数十分。試合会場に乗り込んだ選手たち。その表情には、迷いは無い。
2005年度、MAD WOLVESの初戦まではあとわずか。更衣室で、選手たちは静かに闘志を燃やしていた…。

今年から、選手主体として動き出したMAD WOLVES。春から様々な練習内容、トレーニングを取り入れ、シーズンインに備えて体を鍛えてきた選手たち。春からの成果が実践される場所がオープン戦であり、取り組んできたことが問われる場所なのである。



選手達がユニフォームに着替え終わり、グランドに出るころには、力の弱まりだしていた雨は止んでいた。しかし、空は今にも泣き出しそうな曇り空。今回の試合会場は北海道医療大学グランド。降り続いた雨のため、フィールド中央にはうっすらと水溜りが出来ている。気温、湿度は高く、ムシムシした空気がフィールドを包んでいるのだが、たまに強い風がフィールドを縦に吹き抜け、湿気を払ってくれる。グランドコンディションは、良好とはいえない状況での試合開始を迎えることとなった。

今シーズン初戦の相手は、昨シーズン、入れ替え戦で札幌大学を破り、悲願の1部昇格を果たした、北海道医療大学ファーストモーラーズ(以降、医療と略します)。ここ数年でも、試合経験の無い相手となったため、互いに相手校に苦手意識を植えつけたいのは確か。オープン戦といえど負けられない1戦となった。

グランド練習を終え、ベンチに一度戻る選手たち。試合前のハドルの中で、主将の尾越(#71)は、選手たちにこう言った。

「今日の試合、春からの俺たちの取り組みが問われる場所なんだ。全否定されたくないよな?今日は勝とう!勝つぞ!!」

選手たちのモチベーションは最高潮に達した。こうしてサイドラインに並んだ選手たち。ホームの黒いユニフォームを纏った選手たちの中から、レフェリーの笛の合図で、今年の幹部となった、主将 尾越(#71)、OFFキャプテン 高野名(#84)、DEFキャプテン 佐藤(#3)、そしてKICKキャプテン 安保(#46)の4人がセレモニーのためフィールド中央に向かう。
自己紹介の後、コイントス。勝った医療は前半リターンをチョイス。握手を交わし、ハドルへ向かう幹部。フィールド中央に2つの大きなハドルが出来る。尾越の合図で選手たちは人差し指を高々と空に向けて掲げた。

ついに2005年、MAD WOLVESの初戦が、ついに幕を開けのだった。
大事な初戦、WOLVESの立ち上がりは…。
道工のキックオフ、キッカーは2年目の澤田(#29)。医療陣30yd付近で医療のリターンを止め、道工のDEFが開始される。
3rd down outで流れをまずはこちらに引き寄せたい道工DEF。しかし、その気持ちが空回り。タックルミスが相次いだと思えば、ロングパスを決められてボールは簡単に道工陣10yd付近まで簡単に運ばれてしまう。
ズルズルとTDを取られてしまいそうなこの嫌なムードを、DL三谷(#53)とDB高野名(#84)のロスタックルで4thダウンに持ち込み、何とか振り払うものの、FGをあっさりと決められてしまうのである。

道工 0−3 医療
先制は医療。FGといえど、先制点を許したという事実は確か。この3点が選手にプレッシャーを与えてくるのは明らかであり、一刻も早く同点、そして逆転に持ち込みたい。

医療のキック、道工のリターンで試合再会。しかしここで、初めてリターナーに入った神山(#34)がキャッチミス。思うようにリターンが出来ず、道工は自陣20yd付近からの攻撃を強いられてしまうのである。
何とかこちらに流れを引き寄せたい道工。RB澤田(#29)のラン、WR日光(#82)のパスが効果的に決まり、1stダウンをリズム良く更新。ボールを50yd付近まで運び、流れを引き寄せはじめていた。
翌1stダウン。ここもRB澤田の好走で、ゲインを重ねたと思ったのだが、RB安保(#46)がホールディングの反則を取られてしまい、流れをうまく引き寄せられない。今シーズンからTEもこなしている山田(#5)へのパスが決まるも、1stダウンの更新には至らず、パントを蹴ることに。道工はうまくリズムをつかめない我慢の時間帯が続いてしまう。

翌、医療の攻撃は、道工DEFが踏ん張り3rd down outに仕留め、OFFの反撃を待つ。
DEFの好守に応えたのは今年4年目のホットライン、QB垂水(#9)とWR高野名(#84)だった。
RB澤田のランを重ね、迎えた3rdダウン。QB垂水のロングパスが右サイド奥深くに投げ込まれる。これが、相手DBを追い抜いたWR高野名の手に吸い込まれた。
道工、今シーズンの初得点はWR高野名の60yd独走タッチダウン。嬉しい嬉しい逆転となるタッチダウンとなったのだ。

道工 7−3 医療
キックも落ち着いて決めた道工。逆転に沸く、道工ベンチ。この流れで追加点が欲しい。

道工のキックで試合再会。流れに乗った道工は、医療の攻撃を3rd down outに仕留めた所でクォータータイム。立ち上がりの第1Qは、道工の4点リードで終えることとなった。
リードで迎えた第2Q、追加点は取れるのだろうか…
医療のパントキックを、うまくリターンできなかった道工は自陣30yd付近からの攻撃を開始、しかし、ゲインは重ねられず、パントを迎えることに、ここでパンターの垂水(#9)がミスキック。医療OFFに道工陣40ydからの攻撃を開始されることとなり、ピンチを招いてしまうのだ。
ここで若いDB陣が攻めたてられる。
ショートのパスを簡単に通らせてしまうDB陣。それにタックルミスが手伝い、次々と1stダウンを更新される道工DEF。気づけばボールは道工陣10yd付近まで運ばれていた。エンドゾーンを背負っての道工DEFこのピンチに奮起したのは、DEFキャプテンのLB佐藤(#3)だった。
医療OFFのホールディングの反則で迎えた1stダウン残り20yd。医療のRBに好タックルを浴びせた佐藤、ボールはRBの腕からこぼれ落ちた。これをリカバーしたのは、DB神山(#34)。このファンブルリカバーにより、道工は攻撃権をもぎ取ることとなったのだ、ビックプレーに沸きあがるサイドライン。自陣20yd付近から攻撃を開始することとなる。

ところが、このチャンスを活かせない道工OFFは簡単に3回で攻撃を終え、パントキックで攻撃権を放棄、50yd付近から医療の攻撃を迎えることとなってしまう。

ここでも医療OFFに道工のパスDEFを攻め立てられ、次々と1stダウンを更新させてしまう 道工DEF。医療の反則で、罰退などがあったものの、流れは変わらず。
結局、エンドゾーン近くまで攻め込まれた道工は、タッチダウンこそ取られなかったものの、FGを決められてしまうのである。

道工 7−6 医療
追加点を先に取ったのは医療。道工は、嫌な流れを変えあぐねる、なんともフラストレーションのたまる試合展開が続いていた。

医療のキックで試合再開。ここでもリターナーの神山のキャッチミスで、思うようにリターンが出来ない。自陣20yd付近からの道工OFFが開始される。
ここで、第2Q、RBに入っていた高野名(#84)が快足を見せる。
怒涛の5連続キャリーで1stダウンを2回更新、自陣40ydまでボールを運んだ。残り時間は2分を切っている。
ここでRB高野名は澤田(#29)と交代。この澤田のランで、3rdダウン残り3ydのシチュエーションを迎えた道工OFF。ここでQB垂水はTE山田(#5)へのパスを試みる、これが相手LBの胸へとボールが飛び込み、痛恨のインターセプト。医療に攻撃権が移ってしまうのだ。沸きあがる医療ベンチ。流れは医療に傾いた。と、思われた。

細かいパスを通されて、迎えた3rdダウン残り4yd。医療TEに向けて投げられたパスだった。
このパスをキャッチしたのは、DBに入っていた高野名。
「足が攣りかけていたので…。タックルされると思ってました。」
と試合後話した高野名。相手を振り切り、約60ydのインターセプトタッチダウンを決めたのだ。

キックも決まり、道工 14−6 医療
道工、高野名のファインプレーにより、前半終了間際に大きな追加点をあげる。

道工のキックのあとの医療の攻撃。しかし攻撃時間は残っておらず、パスを2本投げたところで前半終了の笛がフィールドに鳴り響いた。

道工 14−6 医療 
高野名の、これまで全得点をあげる活躍により、前半戦をリードで折り返すこととなる。

「まだまだだ!まだやりきってないよな!!こんなんじゃ終われないぞ。後半2Q、点差なんか忘れてやり直すぞ!!」

主将 尾越(#71)が、ハーフタイムのハドルの中で緩みだした選手たちの気を引き締める。

この一言に気を引き締めなおした選手たち。OFF、DEF、試合中のアジャストの内容を確認しあう選手、体を冷やさないようにストレッチ等で体を動かす選手、静かに息を整えて後半に備える選手。形は違えど皆、目は同じ。後半戦に向けて、闘志をギラつかせていた。
今回も沢山の父母、OBの方々が試合にかけつけて下さいました
悪天候、そして少し札幌から離れている、遠い医療大グランドにも関わらず、顧問の佐々木先生をはじめ、沢山の父母、OBの方々が応援にかけつけて下さいました。ありがとうございました。次戦は6月25日(土)、道工グランドで小樽商科大学トマホークスと13時キックオフです。沢山の皆様のご来場、お待ちしております。
後半開始の第3Q、モメンタムを先につかむのは…
道工リターンで後半戦開始、ここでもキッキングのミスが目立ってしまう。
リターナーに入った日光(#82)がキャッチミス。満足にリターンできず、自陣20yd付近からの攻撃が始まってしまう。
RB澤田(#29)のランを試みたものの、1stダウンには至らず、パントを蹴ることに、ここでP垂水(#9)の好パントが飛び出し、ボールは一気に医療陣20ydへと転がり込む。

ここでもミスが目立ったのはパスDEFだった。

ランは手堅く止めるのだが、簡単にパスを通される道工DEF。タックルミスも手伝い、気づけばジリジリと道工陣40yd付近までボールを進められていた。
嫌なゲインのされ方に、徐々にフラストレーションの溜まる道工DEF。このムードを払拭するようなビックプレーが、それまで足を引っ張っていたDBから生まれることとなる。

相手WRに投げ込まれたパスを受け取ったのは、DB神山(#34)だった。インターセプトと同時に、右オープンサイドを駆け上がった。

自身初となるインターセプト、笛と同時に小さく右手でガッツポーズを決めた神山。気づけば約50ydのインターセプトタッチダウン。この2年生DBのビッグプレーに沸きあがる道工サイド。モメンタムはここで大きく道工に引き寄せられることとなる。

キックは外してしまうものの、 道工 20−6 医療 
このトライフォーポイントを外したのはとても痛い。後半この失敗がどのように響いてくるのだろうか。

道工のキックで試合再会。医療陣30yd付近からの攻撃が開始された。
1stダウンの医療の攻撃、勢いに乗る道工はLB佐藤(#3)がロスタックルに仕留めてここでも攻守を見せる。

しかしピリッとしないのがパスDEF。翌2ndダウンでもあっさりとパスを通されてしまう。次の攻撃時も、ランでロスタックルに仕留めるのだが、3rdダウンロングの状況でも、簡単にパスを通され、ボールは道工陣30yd付近まで運ばれてしまう。

先ほどから好調のランDEFを、頼りないパスDEFが足を引っ張るといった状況が続いている。ここでこそ、得点には至らなかったもののこの後の医療の素晴らしいパントキックにより道工は自陣1ydからの攻撃を強いられることとなる。

自陣1ydからの道工OFF。QBスニークとRBのランを、効果的に使うものの、ディレイ・オブ・ザ・ゲームの反則を取られ、1stダウンの更新はできなかった。
パンターが、エンドラインを背負ってのパントキック。もっともプレッシャーのかかる場面だったが、スナッパーに入っていた、畠山(#25)と、 Pの垂水(#9)が落ち着いて決め、ボールは50yd付近まで転がったところで笛が鳴った。

続く医療OFF、3rdダウン残り5ydの局面だった。パスが決まりドッと沸く医療サイド、その時だった。
タックラーを引きずり、走る医療WR。2ndタックルに向かったLB佐藤がここでも見せてくれた。
「2ndタックラーだったんで…。常識です。」
と答えた佐藤。不用意に開いたボールを持つ腕を見逃していなかった。タックルと同時にボールをかきだした佐藤、転がるボールをリカバーしたのはDL安保(#46)。佐藤の今日、2度目となるファンブルフォースで今日、4度目となるターンオーバーを見せた道工。3Q終了間際のこのターンオーバー、流れは完全に道工か、と思われた瞬間だった。
終盤第4Q、医療の反撃を食い止めることはできるのだろうか…
直後の道工OFFの途中で第4Qに突入。このまま一気にダメ押しの追加点が欲しい所だったのだが、フォルススタートの反則、QBサックを受けるなど、うまくかみ合わず、パントを蹴ることに。道工OFF、チャンスを活かしきれない。

50yd付近からの医療OFF、ここから医療OFFの猛攻が始まる。

若手DB陣を攻め立てられ、次々と同じパスでゲインを重ねられる道工DEF。途中、DL安保(#46)のQBサックで盛り返すものの、焼け石に水。QBサックをはさんで、なんと5連続のパスを決められて、ボールは息をつく間も無く道工エンドゾーン前まで運ばれることとなる。

道工のゴールラインDEF、医療の攻撃を凌ぎ、むかえた4thダウン残り3yd、医療OFFはギャンブルを選択、ボールが医療FBに手渡された瞬間だった。
ガチッという音と共に、医療FBをゴールライン手前でタックルしたのは、DLに入っていた佐藤(#70)だった。ピンチは招いたものの、無失点で切り抜けた道工大、自陣3ydからの攻撃を向かえることとなったのだ。

道工DEFの踏ん張りに、応えるように道工OFFが息を吹き返す。
RBに入った高野名(#84)がここからなんと、第2Qの5連続を越える、7連続キャリーでどんどん陣地を回復する道工OFF。これにWR日光(#82)のパスも決まり、ボールは医療陣30ydまで。さらに勢いに乗った道工OLは止まらない。ここでTBに澤田(#29)が入り、さらにゲインを重ねる。WRに入った高野名へのパスをはさんだ攻撃で、医療陣5ydまでボールを進めてしまう。流れは完全に道工ペース。この後簡単に澤田が相手LBをかわし、エンドゾーンへと走りこんだ。

キックを外してしまうものの、
道工 26−6 医療
ここでダメ押しの追加点、医療を突き放した。残り時間は1分少々。

道工のキックで試合再会、ここでもキックの甘さが目立つ。
タックルミスで医療のリターナーを無駄に走らせてしまい、ボールは50yd付近までリターンされてしまう。
この後もパスを2本、簡単に通された道工DEF。道工陣30yd付近での2ndダウン残り5ydだった。
医療レシーバーに投げられたパスはDB神山(#34)の胸の中へ。神山の今日、2本目となるインターセプトは、医療の息の根を止めた。残り時間は30秒。

続く道工OFFはニーダウンを選択。タイムアップの時を待ち、試合終了。

道工 26−6 医療  
2005 MAD WOLVES、白星発進となった瞬間だった。

歓喜に沸いたのは、初めて試合を間近でみた1年生。上級生たちは、むしろ敗戦のときのような苦い顔つきをして、サイドラインから荷物をかかえて出て行ったのだった。
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「初戦を終えて、現段階のOFFは荒削りではあるが、タッチダウン2本という結果を収めたことは評価したいと思う。しかし、内容に関してはまだまだであり、これからやらなくてはならないこと、課題が数多くあるのも事実である。秋のシーズンに向けて、自分を含めた各個人が危機感を持ち、OFFについてもっと考えていかなければならないことを実感した試合でした。」
OFFキャプテン  高野名 航

「練習で出来ていないことがもちろん出来ていない。当然の結果です。この試合を通じて、自分に何ができていないのか、何が足りないのかを充分把握して、これからの練習に取り組んでほしいと思う。」
DEFキャプテン  佐藤 洋

「練習不足、この一言に尽きます。こんなぬるいキッキングでは、秋、勝てないのは目に見えています。やり直しです。」
KICKキャプテン  安保 圭介

「勝つことはできたものの、内容は、危ない場面が多々あり、決して満足できるような内容ではありませんでした。今日の試合で見つかった課題、煮詰めなおさないとならないプレイ、個人のスキルアップ等、選手一人一人が感じたと思います。今の現状に満足せず、日々進化できるように精進していきたいです。」
主将  尾越 仁壽

「結果として、初戦を勝利で飾れたことは、とても素晴らしい事。そこは本当に評価してあげたい。しかし、内容はいいところもあったのは事実だが、散々。あれでは秋は勝てない。残り2戦でどう変わり、どう秋に持っていくかが今後の課題だと思う。」
監督  高橋 優和
初陣を勝利で飾れた‘05 MAD WOLVES。次戦は小樽商科大学トマホークス…
勝利に浸ることも無く、結果、危機感だけが残る試合内容となってしまった‘05 MAD WOLVES。確かに、「北海道リーグ優勝」を掲げて取り組んでいるチームとは思えない、散々な内容だった。

ぼーっと過ごしている選手、汗を流して必死に練習に励む選手。両者にも時間は平等に流れるのは当たり前であり、秋のシーズンも、平等にやってくるのである。

選手たちは今、今シーズンの明暗を分ける分岐点に立たされているのではないのだろうか。

この試合で満足するのか、必死に練習に取り組むのか。
前者になるのか、後者になるのかはその選手次第。




次の試合までは2週間、秋季リーグ開幕までは10週間。
(高橋優和)
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